ついに辿り着いたフンザは小さな集落で、村を一周できる道がありました。
まずは村を一巡りするべく、その道をぐるっと歩いてみることにします。
するとその道中で、村人から尊敬されている日本人のおばあちゃんに会いました。旅の途中では、現地の人々に敬われている日本人に出会うことが少なくありません。当時の僕は一人の若造に過ぎませんが、そのたびに誇らしい気分になったことを覚えています。
フンザは、「世界一長寿の村」としても知られています。
その長寿の秘訣を聞いてみると、栄養分を多く含んだヒマラヤの雪解け水にあるとの話。
さらに村には「長寿の水」と呼ばれる湧水があると聞き、「そりゃあ飲まな!」と訪ねた先には……コンコンと湧き出る、灰色の水が。悪い予感はしましたが、ありがたくいただくことにします。これできっと、僕も長寿になれるはず!
――ほどなくして、お腹に違和感。
完全にオチが見えていた気もしますが、案の定、下痢になりました(涙)。
ほかにも、フンザにはおもろい人がたくさんいました。
そのなかの一人が、ホテルの支配人のおっちゃん。
『ナウシカ』効果で日本人がフンザに来ることを知っているおっちゃんは、「ハヤオが来たぞ!」と僕に話しかけてくるのです。
「“ハヤオ”って、宮崎駿?」
「イエス! この宿に泊まったおかげで、作品が描けたんだ!」
.…….ほんまかいな? と思いつつ、おもろいので聞いていると、今度は「10年前と20年前にUFOも来たぞ!」と話し始めるおっちゃん。ノリの良さは、大阪人超えです。
しかし「UFO」と聞いた僕は、思わず身を乗り出しました。――そうなのです、デリーへ向かう途中にハマった落合信彦の本『世紀最後の真実』に、「UFOを操っているのはドイツ人である」と書かれていたのです。
「UFOから、人、降りてきた?」
「おお、降りてきたぞ」
「話した?」
「話した、話した」
「それ、ドイツ人じゃなかった?」
「イ エ ス !」
……やったぁ! 落合氏の言ったとおりや。やっぱりフンザ最高!
周囲がキョトンとしている中、僕は一人で大爆笑し、おっちゃんと握手をしました。
興奮気味にベッドに入ったその晩、ところが僕は、熱と息苦しさに襲われました。高山病です。標高が高いフンザへは、手前の街で体を慣らしてから入るように言われていましたが、待ちきれなかった僕は、いきなりフンザへやって来てしまったのでした。
UFOの正体を突き止めた矢先の、高山病。
3日目にして僕はフンザを降りることになり、「これは、触れてはいけない真実に触れた僕への、UFOの呪いだ!」と妄想に耽りながら、風の谷を後にしたのでした。