トラブゾンでの滞在は、旅が始まって以来のお洒落な生活となって大満足。
しかし、気付けば1週間が経っていて、残りの日数もあとわずか。
トルコには、行きたいところがたくさんありました。旅の目的地であるイスタンブールは西の端、有名な遺跡カッパドキアは中央、南海岸はリゾート地――。
「こうなったら、いったんイスタンブールへ行って、帰りの航空券を買っておこう」と僕は決めました。帰りのチケットさえ買っておけば、行けるところまで行ける気がしたのです。
トラブゾンからイスタンブールまではバスで20時間の長旅となりましたが、日本企業が造ったボスポラス海峡の橋を見たときには、疲れも吹っ飛ぶほどに感動しました。遥か遠く異国の地で、日本の技術の素晴らしさを知ることができるとは!
イスタンブールに着くと、宿探しに大苦戦。観光客が多いこの街は、どこのホテルも満室で大賑わい。僕はなんとか1軒のホテルに頼み込み、屋根裏部屋に布団を敷いて泊まらせてもらえることになりました。
さて、ホッとして街を散策し始めると、奇妙なことに気付きました。
街を歩き、道行く人を見てみると、なぜか日本人女性が多く目に留まるのです。
それも、普通の観光客とはちょっと違うのです。ペルシャ絨毯屋の奥さん気取りだったり、ホテルの女将気取りだったり。あまりに現地慣れしすぎている日本人女性に、僕は大きな違和感を覚えました。
夜、飲み屋でその話をすると、教えられた事実にさらにショックを受けました。なんでも、彼女たちはトルコ人男性に恋をして、休暇をとってはトルコへやってくる日本人女性だというのです。だからこそ、滞在中は女房気取りで商売を手伝っているという話でした。
さらに驚いたのは、彼女たちはなんと、帰国後もトルコ人の彼に仕送りを送ってるということ!「私がいないと、彼は生きていけないから」と思ってるんだとか……うーん。
ご想像がつくかとは思いますが、トルコ人男性のほうには、そのような日本人の彼女が複数いるわけですね。たしかにトルコ人男性はめちゃイケメンやったけど!
当時20歳の僕には、彼女たちが幸せなのか不幸せなのかの判断はできなかったけれど、酔った頭の中では、「恋は盲目」という言葉がグルグル回り、酔いが覚めるまでしばらく離れることはありませんでした。