暖かな気候もあいまって、僕のうまいもん探しの旅は南下します。
……え? “なんかします”じゃないですよ?
暖かい九州方面で、いろんなことを“吸収”しようかな~……なんて、今日もオヤジギャグが絶好調! ……ちょっと! 「一気に寒くなった」とかは禁句ですよ(苦笑)。
さて、今回訪れたのは、大分県。
そうですね~、大分と言えば、温泉が有名どころでしょうか。
別府周辺は温泉地として有名であり、街中に間欠泉が多いことから、通称「地獄巡り」も楽しめます。
また、温泉地の醍醐味と言えば、温泉卵!
……ですが、卵だけでは、少し味に飽きてしまいます。
そうなのです。しょっぱさや旨味が、一緒に欲しくなるんです。
――と書けば、もうおわかりですね。そう、口直しに、漬け物が欲しい!
大分旅行では、珍しい名前の漬け物に出会いました。
その名を、「吉四六漬け」。
「きっちょむさん」と言えば、知っている人も多いのではないでしょうか。
今回の大分FOOD紀では、この「吉四六漬け」について紹介します。
――嗚呼、僕も吉四六さんのように、とんちを聞かせたうまい返答ができるようになりたいものです。
「きっちょむさん」って、知ってます?
そもそも、なぜ大分県=きっちょむさんなのか。
疑問に感じた人もいるでしょうから、まずは吉四六さんをご紹介しましょう。
吉四六(きっちょむ)さんは、大分県南東部に伝わる民話の主人公。江戸時代初期、現在の大分県臼杵市野津地区に実在した、庄屋の初代廣田吉右衛門(ひろたきちえもん)さんがモデルとされています。
とはいえ、吉四六さんに登場する“とんち”話は、あくまでも民話。伝記ではありません。
吉四六さんが全国的にメジャーになったのは、昭和50年代以降ですね。光村図書版の国語科教科書に吉四六さんが掲載され、学校の授業で「吉四六さんについて」を学んだアラフォー世代も多いのではないでしょうか。
そんな「吉四六さん」にちなんだ漬け物が、大分名物「吉四六漬け」なのです。
野菜×もろみの組み合わせ
大分名物の「吉四六漬け」は、野菜を醤油やもろみで漬けたものです。
漬け物に使う野菜に決まりはなく、有名なのは大根や人参。それから、最近はお土産の定番として、ごぼうやセロリなんかも人気が高いようですね。
基本的な漬け方としては、新鮮な野菜をもろみ味噌に漬け込み、適度に漬けあがれば完成。なんともシンプルなものですが、野菜にしっかりと味が染みこむと、ご飯のお供としての相性も最高です。
また、食材に決まりがないということもあって、「吉四六漬け 作り方」などとインターネットで検索しても、なかなか情報がヒットしないのではないでしょうか。お土産用に販売されているものの、レシピを公開しているサイトが少ないんですよね。
というのも、そもそもこの吉四六漬けは、大分県の家庭で言い伝えられている漬け物レシピのひとつ。まさに吉四六さんの民話のように、代々語り継がれる漬け物の味なのです。
約300年前から続く味
大分県南にある佐伯市は、古くから醤油の製造が盛んな地域です。
市内には昔から続く醤油工場が数多くあり、日常生活のなかで“もろみ”が食卓に取り入れられています。地元農家のみなさんからは、農作業のあとにぴったりの味として慣れ親しまれている漬け物。これが今や、大分を代表するお土産として定着しました。
いわゆる“醤油漬け”なので、大根などのクセが少ない野菜との相性は抜群。一般的には味が染み込みにくいといわれているゴボウも、吉四六漬けでは定番の味ですね。ゴボウ特有の土臭さも良い風味に変化し、漬け込むことで、程よく食べやすい柔らかさになります。
僕も大分県で数種類の吉四六漬けを食べましたが、おすすめはセロリ! 生のセロリは、独特な香りや風合いが苦手という人も多いですよね。栄養が満点なだけにおすすめの食材ではあるのですが、どうも「青臭さ」も強い野菜です。
ですが、それを吉四六漬けにすることで、青臭さが激減されるのです!
さらに醤油の風味が鼻に抜け、セロリのシャキシャキとした食感もGOOD。
お土産物屋さんなどでは、さまざまな種類の吉四六漬けが販売されていますので、大分県に立ち寄った際には、ぜひ珍しい野菜の漬け物にも手を伸ばしてみてください。新たな発見が待っていますよ!