イスタンブールにはニセ警官がいて、観光客から罰金を取ったり、検査と偽ってパスポートを盗んだりするという話は聞いていましたが――案の定、2日目の晩に、同じ宿の日本人が丸裸で泣いて帰ってきました。
話を聞いてみると、なんでも夜の公園で警官に身ぐるみを剥がされたとか。
被害に遭った人間を間近に見ると、さすがにショックですね……。
さらに、当時のイスタンブールはすごいインフレで、「0」の数が多すぎて勘定できないほどの状態でした。それをいいことに、観光客相手には0を足してみたりするという……そんなこんなで、僕は少し気が滅入っていました。
しかし翌日、僕の心は急浮上!
なんと新市街で、旅の始まりに出会った兄ちゃんとバッタリ再会したのです。
同い年の彼とはインドのデリーで意気投合し、一緒に行動した仲。
見つけた瞬間、お互い「ウォーッ!」と叫びましたね。
奇跡の再会に、僕は一気にプラス思考へ。
周囲を見回せば、すばらしい建造物と、おいしいトルコ料理――。
なーんだ! イスタンブール、良い街じゃないですか!(笑)
そんなわけで僕は、兄ちゃんと一緒に夕食を食べつつ、旅の話に花を咲かせました。
そんな彼は、あと1週間で帰国すると言います。「一緒にカッパドキア行かへん?」と誘うと、「おう!」と二つ返事。旅先での友情ほど、心が躍るものはありません。
夜行バスで11時間かけて翌朝、僕らはカッパドキアに着きました。
カッパドキアは広いエリアで、主に3つの街で構成されています。
僕らは、きのこ岩のあるユルギュップの街に拠点を置くことにしました。
僕らの観光計画はこうです。まず、きのこ岩までは貸し自転車で行き、残りの街はバイクを借りて巡ることにしよう。そうすれば、効率的に安く観光できるはず!
――しかし、僕らは大きな計算ミスを犯していたのでした。
それは、2人とも高校を卒業して以来、最悪に運動不足だったこと!
スタートして5分で息はハアハア、足はパンパン。きのこ岩まではずっと上り坂で、2人して死にかけました。でも、きのこ岩を間近で見た時の感動は忘れません。そこには、自然が育んだ産物と、国の歴史と、人々の生活が現在に至るまで交わり、混在している姿がありました。
僕らは鉛のような足のまま、岩の前でしばらく突っ立っていたのでした――。