ついに僕は、旅の帰路に着くことにしました。
まずは、イスタンブールから旅のスタート地点だったバンコクを目指します。
思い返してみると、出発前、僕はバックパッカーが集うバンコクのカオサンロードで、旅を終えて帰ってきた人たちから旅先の話を詳しく聞いていました。そして、そこで得た情報には、知らなかったらエライ目に遭っていたに違いないことがたくさんあったのです。
何度も書いた気がするけれど、バックパッカーに一番必要な能力は「情報収集力」やと思います。なので僕は、自分もこの旅を終えたらカオサンロードへ行き、これから旅立つ人たちにできるかぎりの情報を提供しようと決めていました。
そんなわけで、僕は迷わずバンコク行きの格安航空券を探しました。
見つけたのは、ギリシャの航空会社のチケット――イスタンブール発、アテネ・ドバイ経由、バンコク行き。「バンコクへ行くのに、アテネとドバイを通るんかい!?」と思いましたが、まあ安いし、しゃあないですね。
さっそく飛行機に乗り込むと、イスタンブールからアテネへは1時間足らずで到着。
で、アテネでは8時間のトランジットとなる旨のアナウンスが。
どうしようかと考えていると、リムジンバスがやって来て、なぜか僕1人を乗せて空港を出るやないか! バスは僕を郊外のリゾートホテルで降ろして、「8時間後に迎えに来る」との話。しかも、ホテルに僕の部屋を取っていると言うじゃありませんか!
それ、チケット代に入ってんの……?
と動揺する僕を置いて、バスはさっさといなくなってしまいました。
こうなったら開き直って、ローマならぬ“アテネの休日”を過ごすしかない。
ヨーロッパに入れたなんて、最後にスゴイおまけ付きの旅になったじゃないか!
……そう思うと同時に、気付きました。
僕はここがどこだか知らないし、ギリシャのお金も持ってないじゃん……。
何の情報もない無力感。僕はホテルで少しだけ両替してコカコーラとポテトチップスを買い、プールでひと泳ぎして、あとはぼんやりとビーチを眺めていました。で、次に気付いたら、迎えのバスの中でした。なんだか、もったいなかったような……。
あの日のアテネの記憶は、夢の中で過ごしたかのようにふんわりと残っています。
ひとつ言えるのは、「やっぱり旅は情報収集が命!」ってことですね(笑)