はじめまして。地方調味料“偏愛”ライターの杉山きこりと申します。
以前、女性誌の旅行ガイド本などを編集していた経歴もあって、仕事やプライベートで地方に行くと、必ず道の駅や地元のスーパーに立ち寄ってしまいます。朝どれ野菜より真っ先に調味料コーナーを物色し、生産者さんの手書きのポップなどを見てほっこりしながら、気がつけば冷蔵庫の中は各地の思い出とともに瓶詰め調味料だらけ…。
そんな私が、大手スーパーでもなかなか流通していない、知られざる地方の名調味料たちをご紹介したいと思います。
人気温泉旅館の朝食に添えられて
記念すべき第一回目は、新潟県・妙高高原の万能調味料 ”からみそ“ です。
毎年、家族で冬に訪れるのですが、出会ったのが4年前。雄大な妙高山を目の前に、和モダンなしつらえと美味しい和食が堪能できる人気の温泉宿【旅館おかやま】に泊まった時のこと。朝食の焼魚にちょこんとひと匙ほど添えられていました。
仲居さんに聞くと「お魚にちょっと乗せて食べてみてください。ご飯のお供にもいいですよ」。言われた通りにひとつまみ乗せて魚を食べて見ると…甘辛い味噌がピリリと効いて、口の中のうま味が倍増! さっきまでの鮭の風味が一変して新たなおかずに。朝からご飯が止まらなくなりました。
お土産に瓶詰めが買えるとのことなので、以来、毎年6?7個、必ずまとめ買いして帰っています。(それでも1年持ちません)
お土産にしてもとても喜ばれ、辛い物好き&酒飲みさんにはもちろん、小学生になる子どもも生野菜につけるとポリポリと延々食べているので、老若男女問わず親しまれる味なのです。
雪国の恵「ぼたこしょう」から作るおかず味噌
ネギ味噌や肉味噌などは他のおかず味噌の原料はわかりますが、からみそは一体何からできているのでしょうか?
調べてみると材料は「ぼたこしょう」という、標高の高い涼しい気候でしか育たない高原野菜。「こしょう」と言っても上越地方では唐辛子のことをそう呼ぶそうで、見た目はピーマンみたいに肉厚で溝が深くあり、それが花の牡丹に見えることから「ぼたんごしょう(ぼたこしょう)」と呼ばれるそうです。普通の唐辛子と違ってふっくらとしているので、タネの部分にある辛味と、肉厚な果肉の甘みの両方持ち合わせているのが特徴。
なるほど、あの甘さと辛さのバランスの所以は、このぼたこしょうだったのですね!しかも標高が高ければ高いほど辛味も強くなるそうで、そりゃ、他で味わえないわけです。
夏~秋にかけて収穫されるので、秋になると各家庭の味が食卓に上がります。この旅館おかやまで供されるからみそは赤倉観光リゾートスキー場内にある【Villa MonRepos】の女将手作りのものだとか。
妙高市特産品に指定されているにもかかわらず、この2軒のお宿内でしか購入できませんので、このプレミアム感もあって私は好きです。(後で知りましたが、一部ネット販売もあったようなのです…)
そのまま添えても隠し味としても!使い方万能
常備しておくと本当に便利ですが、からみそは絶妙なピリッとした辛さがあるので、アクセントが効くのです。ここで食べ方・使い方のバリエーションを少しご紹介しますね。
- 炊きたての白いご飯に乗せておかず味噌として
- そのままきゅうりなど、生野菜につけて
- 焼魚、お肉のソテー、焼きおにぎりなどに添えて
- 辛いのが苦手な人はマヨネーズと混ぜてディップとして
- おでんなどに添えると、素材の味もUP
- 野菜炒めの隠し味に◎
- ラーメンのスープにも載せると深みが倍増
おかずがもう一品欲しい、ささっと用意できるお酒のアテが欲しい、子どものおやつに…そんな時に手軽にパッと使えるので本当に便利です。わが家では夏場、ほとんど毎晩のようにきゅうりとからみそが登場しています。
まとめ
からみその魅了は伝わりましたでしょうか? 唯一無二の味わいなので、なかなか言葉で説明しても伝わりきらない部分があると思います。ぜひ一度、妙高で手に入れて食べてみてください。
これからも「これがないと(その土地の)味が決まらない」とか「生産者であるお母さんの顔が見える」そんな、地方の調味料を発掘しつつ、ご紹介していきたいと思っております。では、また次回をお楽しみに!
取材・文/杉山きこり
Writer:杉山きこり
女性誌、地方旅行ガイド本などで活動する編集ライター。仕事やプライベートで地方に行くと必ず道の駅や地元スーパーに立ち寄り、各地の思い出とともに調味料をお持ち帰り。お取り寄せもするが、できるだけ現地に出向いて偶然の出会いを楽しみたい…!そんな地方調味料の楽しみ方を、皆さんにもご紹介させていただきます。