地方調味料 “偏愛” ライターの杉山きこりです。
台風にゲリラ豪雨、そして地震……。たて続けに自然の猛威を見せつけられた今年の夏でした。自然災害に対しての危機管理や日々の備えについて、改めて考えさせられました。
それに、とにかく今年の夏は暑かったですね。クーラー嫌いの私でしたが、今年ばかりは使わざるを得ない状況でした。
そんな中、毎日冷たい麺類ばかり食べていて、ちょっとで気分を変えたいな……という時に思い出したのが、麦味噌を使った「冷や汁」。麦味噌って麦のやさしい甘さが大好きで、これからの季節に美味しい豚汁や野菜たっぷりのお味噌汁に使うのが定番なのです。でも、九州の郷土料理である「冷や汁」が夏は格別に美味しいとのこと。食べたことはあっても、実際に家で作ったことがなかったので、この夏初挑戦してみました。そこで今回は麦味噌と冷や汁についてご紹介したいと思います。
麦味噌って、何がどう違うの?
麦味噌の原料はその名の通り、大麦やはだか麦を蒸して麹をつけた「麦麹」と大豆と塩で熟成させて作られます。日本の八割は米麹で作られた米味噌で、後の1割ずつが麦麹を使った麦味噌や豆麹を使った豆味噌です。
麦味噌は九州全域と、山口県や愛媛県などで食されていて、かつては各家庭で作られていたので「田舎味噌」とも呼ばれています。麦味噌は使う麹の量が多いので甘みがあって、また塩分控えめなのでとってもまろやか。そして、何よりもふわんと香る麦の香りが、とっても美味しいのです。
とにかく野菜との相性が抜群で豚汁や薩摩汁には欠かせませんが……、注意しないといけないのが味噌を溶かす時。大豆や麦の繊維、麹などの「味噌かす」が多く残るので、味噌漉しを使ってすり潰しながら溶かす必要があります。この味噌かすが苦手な方も多いと思いますが、これをするだけで、口当たりがぐっと良くなりますよ。
また、麦味噌はわが家の子どもたちも大好き。普段、あまり野菜を好んで食べない男児たちも、麦味噌とキュウリをはじめとした野菜スティックを用意すると、そのままつけてぽりぽりと美味しそうに食べています。塩分が控えめなので、そのまま食べても辛くなくて美味しいのです。
宮崎名物・冷や汁ってなに?
そんな麦味噌を使った宮崎の代表的な郷土料理「冷や汁」は皆さん、ご存知でしょうか?
歴史的には鎌倉時代の書物にはすでに「冷や汁」が記されているぐらい古いものになります。九州を始め、各地の郷土料理として残っているそうですが、昔からの原型をとどめているのは宮崎県だとか。
頭と内臓を取り除いた小アジの煮干しといりゴマ、焼き味噌と一緒にすり合わせたものをだし汁で伸ばし、そこに青じそとキュウリ、豆腐を入れ、熱々のご飯にのせ、先ほど作った冷やした出汁をかけます。宮崎では麦味噌に麦飯を使うのが本場流だそうですよ。
かつて雑誌編集をしていた頃、宮崎へ取材に行きました。地鶏に、チキン南蛮に、マンゴーなど美味しいものをたくさん食べ取材していたのですが、「冷や汁」だけは最初のイメージが良くなく……。あまり乗り気ではなかったのですが、ひと口食べてみると……「あぁ、味わい深くてなんて美味しいの!?」 まさに目から(口から?)鱗だったのです!あぁ、何事も見た目で判断するものじゃないなぁ、と改めて思った瞬間でした。
宮崎流!本場冷や汁を作ってみた!
では実際に作ってみたいと思います。素朴であっさりとした素材だけあって、アジの干物から出る旨みやごまの風味、大葉やミョウガなどの薬味がとっても重要になってきます。ただ混ぜてかけるだけでなく、炙ったり炒ったり…のひと手間が美味しさの秘訣だと思いますので、ぜひ試してみてください!
冷や汁(2人分)
<材料>
アジの干物(2枚)、キュウリ(1本)、木綿豆腐(1/2丁)、大葉(5枚)
いりごま(25g)、麦味噌(50g)、だしor水(400cc)
<作り方>
①アジの干物をグリルで焼いてほぐす
②キュウリをスライサーで切り、塩をまぶして揉み込む。しんなりしたら水で洗って水気を絞る
炒ったゴマをすり鉢で擦り、そこに表面をグリルかトースター、バーナーなどで炙った味噌を入れてさらに擦る。そこに焼くほぐしたアジを入れ、さらに擦る。
④③で作った味噌をだし(or水)で溶いて、そこに細かく崩した豆腐とキュウリを入れる。
⑤熱々のご飯にかけて大葉やミョウガなど薬味をのせて出来上がり!
熱々のご飯にかける以外にも、そうめんだしにしても美味しそうです。また、毎回作るのは大変でも、この味噌玉を冷凍しておくと、お水で溶いて豆腐、キュウリに薬味を乗せるだけでいつでも冷や汁が楽しめますね。お夜食やお昼、簡単に済ませたいときにぴったりです!
まとめ
味噌汁が欠かせないわが家には、常時いろんな味噌が冷蔵庫には入っていますが、こんな使い方があったなんて! 来年の夏は冷や汁はぜひ味噌玉を冷凍しておきたいな、と思いました。寒い冬に仕込んで、夏にしっかり熟成され、秋は新味噌が登場する季節。ぜひ麦味噌を見かけたら試してくださいね! 暖かい豚汁が恋しい寒い時期にはもちろん、暑い日には冷や汁もオススメですよ。
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写真・文/杉山きこり
Writer:杉山きこり
女性誌、地方旅行ガイド本などで活動する編集ライター。仕事やプライベートで地方に行くと必ず道の駅や地元スーパーに立ち寄り、各地の思い出とともに調味料をお持ち帰り。お取り寄せもするが、できるだけ現地に出向いて偶然の出会いを楽しみたい…!そんな地方調味料の楽しみ方を、皆さんにもご紹介させていただきます。