高温多湿が育てた発酵食品
「発酵」の食文化は、世界的に見るとその風土によって全く異なります。
これは、発酵食品が伝統的な食べ物であることによります。代々受け継がれた材料と調味料、発酵菌、そして独自の製法によってさまざまな発酵食品が生み出され、現代に受け継がれているのです。
特に、発酵菌の違いは大きいですね。
そもそも、発酵に必要な酵母やカビなどの微生物は、生育しやすい条件(湿度や水分量など)が整わないかぎり繁殖ができませんので、日本のような高温多湿な気候は繁殖に最適です。
ですから、味噌や醤油、日本酒といった発酵食品文化が古くから日本で盛んだったのは、風土に恵まれていたという理由がありそうですね。僕たちの国の伝統食材の中に発酵食品があるのは、何となく嬉しいと感じる自称・発酵通であります。
僕たちが普段から何気なく食べている物の中にも、発酵食品はたくさんあります。日本を代表する発酵食品と言えば、納豆・味噌・しょうゆが思いつきますね。他にも酒や酢、鰹節、漬物、ヨーグルト、チーズなど、食卓に溶け込んでいる発酵食品を挙げればキリがありません。
これが、日本国内だけでも地方へ行くと、さらにバリエーションも増えていきます。クサヤや豆腐よう、酒盗、鮒寿司など、地域性がより濃くなっていくためです。
食材に特徴が出る地域の料理
地図で見れば一目瞭然のように、日本は細長い島国です。周りを山で囲まれている地域もあれば、海が目の前に広がっている場所もあります。ですから、それぞれの地域で取れる農作物もバリエーションに富んでいます。
例えば、芋類ひとつを取ってみても、さつまいもは九州の南部で取れ、冷害に強いじゃがいもはどちらかと言えば山梨、長野などの山間部や日本の北部が産地となっていますね。
芋類を使った郷土料理と言えば、沖縄、長崎、鹿児島のさつまいも飯、カンショまんじゅう、干しいもなどがあります。
豆類も地域差が大きい食材です。それだけいろいろな種類があるからでしょう。
特に、発酵食品の代表である納豆は特徴的です。糸引納豆は主として東日本が多いですし、納豆汁餅は東北地方の郷土料理です。逆に生粋の関西人からは、納豆は現在でも好き嫌いが分かれる食品です。関西地方には納豆の文化が浸透していないので、今でも苦手という人も少なくないんですよ。
伝統的な食品が発酵食品と一緒になって、さらに栄養価を上げているものもたくさんあります。この話題に関しては、「伝統食材をさらに栄養価の高い発酵食品に変遷させる麹菌の秘密」でも紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。
長寿の裏に、発酵食品あり!?
日本一の長寿県の称号を得た都道府県をご存知ですか?
2013年の厚生労働省の発表によれば、男女とも平均寿命で1位を取ったのは、「長野県」でした。
「あれ? 長寿日本一って沖縄ちゃうん?」なんて思った人も多いのではないでしょうか。数年前までは、長寿=沖縄とテレビなどでも紹介されていたので、長野県=長寿のイメージはあまりありませんよね。
沖縄県については、村単位ではご長寿さんが多い地域もありますが、あくまで統計調査では、脳卒中の死亡率が全国1位という残念な称号も持っています。
長野県が長寿日本一になった理由は、食文化だと言われています。
長野県では、野菜を中心にした伝統食品がいまだに普通に食べられています。野沢菜と言えば、長野ですもんね。また、発酵食品である味噌の消費量も日本一です。
さらに、核家族化が進む日本国内の中でも、近くに祖父母が住んでいたり、3世代・4世代同居など幅広い世代が一緒に生活していたりすることから、若い世代に古き良き食の知恵が自然と受け継がれているのです。
発酵食品の味噌には、発酵過程で作られるアミノ酸の一種である「GABA」が豊富に含まれています。GABAには神経を落ち着かせる効果がありますので、血圧の低下にもつながります。味噌は塩分が気になりますが、最近は減塩タイプの商品も珍しくありません。
長野県が1位になった裏には、年代を越えた伝統食品や発酵食品の摂取があるようです。
脈々と受け継がれる、古き良き食生活の知恵。いわば「おばあちゃんの知恵袋」のような、現代風に言うと「ライフハック術」ですね。僕たちも積極的に、発酵食品を食生活に活用するようにしましょう。
さしずめ今夜は、おいしい日本酒を片手に、野沢菜のつけものをアテに晩酌を楽しみたいと思いました。