冷え込む日には、暖かい部屋で温かな料理を食べて、ココロも体も温まりたいもの。
僕個人の意見ですが、日本に伝わる「鍋料理」って、本当に理にかなってると思います。
鍋料理は、基本的には家族で囲んで食べる料理ですよね。最近では1人向けの鍋料理も増えていますが、昔ながらの土鍋を家族で囲んだ鍋料理は、雰囲気もあいまって格別な味がするんですよ。
日本の歴史を振り返ると、それこそ縄文時代の頃から「囲炉裏を囲んで鍋料理のようなものを食べていた」ともされています。そして時代が移り変わっても、さまざまな地域でその土地に伝わる鍋料理が食べられています。
現代にもその味が受け継がれ、郷土料理として根付いているもののひとつに「ほうとう」があります。「ほうとう」は甲斐の国、つまり現在の山梨県を中心とした地域で作られている郷土料理。
小麦粉を練って作った麺と野菜を一緒に煮込み、味噌仕立てにした料理です。同じようなメニューとしては、日本全国に共通して「味噌煮込み」うどんがありますよね。
僕としては、どちらも捨てがたい!
いずれかを選ぶことが難しい、究極の勝負が始まってしまったようです。――そう、きのこの山派と、たけのこの里派との戦いと同レベルの、激しい争いになりそうです。
「ほうとうvs味噌煮込み」。
うどん界の王者には、果たしてどちらがふさわしいのでしょうか!?
先攻 ほうとうの魅力
先攻をとったのは、郷土料理としても人気の高い「ほうとう」。
ほうとうと味噌煮込みの違いとしてはまず、「麺」の存在がありますね。味噌煮込みに使われるのは主にうどんの麺ですが、ほうとうは「各家庭で異なる」という特徴があります。
ほうとうに使われているのはそもそも、小麦粉を練って作った「麺状のもの」です。うどんのような麺を使う地域もありますし、すいとんや九州地方の団子汁のような小さな塊を作って使う家もあるので、作り方が家庭によって違う、まさに「家庭の味」と言えます。
中に入れる具材は野菜が中心で、とってもヘルシー! 味付けは味噌が基本で、ほうとう自体に塩を入れないため、煮込む過程で自然と汁にとろみが出るという特徴もあります。
塩分控えめかつ消化に優しい材料が中心、さらには野菜と炭水化物のバランスが優れていることから「冬場の栄養食」としても有名です。
こうして書いてみると、ほうとうはなかなか優れた鍋料理と言えそうですね。
対する「味噌煮込み」は、どのような手段で反撃してくるのでしょうか!?
後攻 味噌煮込みの反撃
「味噌煮込み」と言えば、全国各地で食べられている「味噌煮込みうどん」を指します。
「味噌で煮込んでいる鍋料理」という点だけを見ると、ほうとうと大きくは変わらないようにも感じますよね。
しかしインターネットで調べてみると、名古屋方面の郷土料理「味噌煮込みきしめん」と先ほど紹介した「ほうとう」は、味噌煮込みうどんには分類されないそうです。
鍋に入れる具材は、ネギ、シイタケ、かまぼこ、お餅など一般的なものなので、イメージとしては「味噌味の鍋焼きうどん」になります。また野菜中心のほうとうと異なり、鶏肉や卵といったタンパク質を豊富に含む食材を具材に使っているという特徴もあります。
その分、野菜の量が控えめになる点が「ほうとう」との違いと言えるでしょうか。
ちなみに郷土料理としての「味噌煮込みうどん」は愛知県が有名ですが、全国各地にそれぞれの味があります。日本各地には地域によって味わいの異なる味噌がありますから、土地によって味噌煮込みうどんの味も自然と変わってくると言えますね。
――うどんもいいけれど、ラーメンも捨てがたい! 以前、味噌ラーメン発祥の店舗についてまとめたので、ラーメン通の方はこちらもいっちょどうぞ。
「ほうとうvs味噌煮込み」勝負。結果は――?
ほうとうは、野菜をふんだんに使っているため消化が良く、栄養バランスに優れています。一方、味噌煮込みうどんは、野菜の量はほうとうに劣るものの、鶏肉や卵といったタンパク質が豊富な材料を具材に含んでいます。
似ているようで異なる、2つの麺料理。
今回の調査では、どちらも負けず劣らず優秀な面を持っていることがわかったので、勝負は「引き分け」にしたいと思います。
――ちなみに。
味噌煮込みうどんのルーツは諸説ありまして、戦国時代に武田信玄が陣昼食に食べていた「ほうとう」が、武田家滅亡後に徳川家に伝えられたという説もあります。
となると、甲斐の国の武将だった武田信玄から三河の国――現在の愛知県にほうとうが伝わったと考えても不思議ではないですね。ほうとうと味噌煮込みうどんに関するルーツは諸説あるので、決着がつくまではまだまだ時間がかかるな、と思いました。